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    COLUMN

森を育てるということ

2023-10-24
こんにちは。
前回のチェンソーオイルの記事に、沢山の反応ありがとうございます。

チェンソーオイルに関連して、最近は森林について勉強する機会が多々あったので、潤滑油とは少し脱線してしまいますが
コラム内で紹介させて下さい。


みなさんは、日本の国土のどれくらいを森林が占めているかご存知ですか?
我が国の森林面積は、国土の約2/3にあたる約2,500万haです。


多い!と驚きましたか?

少ないと感じましたか?


私は、なんとな~~く多いんだろうなと思っていましたが、2/3も占めているとは思っていなかったので驚きました。




私達は漠然と、森林が多い=理想的な状態、と捉えているかもしれません。

地球温暖化防止、水源涵養、資源利用、生物保全、はたまたリラックス効果……森林の持つ力は、簡単には言い表せないほど大きく、またいろいろな役割を担ってくれています。

では、これらの保全活動といえば何が思い浮かぶでしょう。




マイバッグを使う、節電節水する…
いずれも「エコな生活」に代表される行為ですね。

しかしどうでしょうか。森林そのものを、「直接」守るためには、なにが出来るでしょう?


環境保全、と聞くと、私たちはなんとなくそれらしい行動を思いつくことができます。
しかし「森林の保全」と聞くと、無関心ではないまでも、あまりピンとこないことも多いのではないでしょうか?

私自身、森林・林業・木材産業を勉強していて、ハッとさせられることが多くありました。


冒頭お伝えしたように、我が国の森林面積は2,500万haです。お察しの通り、世界有数の森林国と言えます。
森林量は毎年同じなわけでもなく、減少しているわけでもなく、毎年6千万㎥増加しています。

これは、見方を変えると「森林が多すぎる」とも言えます。


これは、「樹種別・林齢別の炭素吸収量を表したグラフです。
グラフを見ると、11-40歳までの若い木が、Co2をよく吸収していることが分かります。
10代半ば~ハタチ前後の人間の食欲が旺盛なのと同様、木にも吸収率に違いがある事が見て取れますね。

林齢が50年を越えてくると、Co2の吸収率は下がります。
これはいわゆる「利用期」と呼ばれるもので、その名の通り、伐採して別の目的に利用していきたい状態の木を指します。

今問題になっているのが、この50年を超えた人工林が全体の50%を占めていることです。

さらに言うと、CO2の吸収率が落ち、木材としても有効活用できていない状態のまま放置された森林が、半数を占めています。


原因は3つあります。

①木を適切に伐る人手が足りない
②伐った木材を活用する先がない
③活用できないため、伐りたくても伐れない


これがあまり良い循環とは言えず、新しい苗を植えたくても、なかなか植える場所がないのです。



「森林を整備することの必要性」
森林は、増えれば増えるだけ環境にとって良いと思い込みがちですが、実際は、「正しく伐り」「正しく管理する」ことが必要です。

手入れしていないままの森林は、1本1本の生命力が弱く、地盤に根が根付いていないため、かえって危険とされています。それらは、土砂崩れなどを引き起こす原因になり得るからです。
森林がその能力を発揮するためには、定期的な間伐(間引くこと)が非常に重要です。また、適切なタイミングでの主伐と植栽が求められます。

木は、ある程度大きくなると、葉っぱが多く生い茂るため、地表への日光は届きにくくなります。日光が遮られると、下層植物と呼ばれる小さな植物が育たなくなってしまいます。

下層植物が無くなると、土壌が弱くなります。弱った土壌は、雨が降っても留まってくれず、土壌流出の原因になり得ます。また、適切な間伐が行われず、木同士が密集して育ってしまうと、土壌に根を張りづらくなるため、必要な水分や栄養分を吸い上げることができません。これが原因で、やせ細った弱々しい木になってしまいます。






樹を育てるには、途方の無い時間がかかります。

樹は1年や2年では育ちません。
放っておいたらいつのまにか大きくなっているわけでもありません。


何十年、あるいは何百年、手間と時間をかけ、ようやく育ちます。

主伐した場所に新しく樹を植えること。収穫した木を、家具や建物に使用すること。これらは「木を使う」というサイクル間伐で非常に重要な役割を担っています。


例えば割りばしは、資源の無駄のように挙げられてしまうことも多いですが、日本では割りばしのために木が伐採されることはありません。間伐した時に発生してしまう間伐材や端材を有効利用している代表的な例です。


一見、森林破壊のように見えてしまう間伐には、実は森林保護の面があります。


環境保全、と聞くと、私たちはなんとなくそれらしい事を思いつくことができます。
しかし「森林の保全」と聞くと、無関心ではないまでも、あまりピンとこないことも多いのではないでしょうか?



苗を植え、育てる事だけが森林の保全ではありません。
木を伐り、伐った木を無駄にせず別のプロダクトへ再利用することも、森林の保全と言えるのです。








チェンソーオイルって?

2023-03-24
こんにちは。
皆さんはチェンソーオイルと聞くと、どんなオイルを思い浮かべますか?

多くの方は、大きな木を伐採するときのあのチェンソーに使用するオイルを思い浮かべるのではないでしょうか。

実際のチェンソーオイルと呼ばれているオイルには「チェーンオイル」と「エンジンオイル」の2種類があります。

2つにどんな違いがあるのか、解説していきます。
チェーン(チェンソー)オイル
ひとつめに紹介するのは、「チェーンオイル」です。「チェンソーオイル」と呼ばれることもあります。

チェンソーは、チェーン刃(ソーチェン)が高速回転する事でモノが切断できる仕組みになっています。
もちろん、回転が大きければ大きいほど、強い摩擦が発生します。チェーンオイルは、この摩擦を低減させる役割を持った潤滑油です。

チェーンオイルが無ければ、回転の摩擦で熱が発生し、チェーン刃やガイドバーはあっという間に焼きつき、摩耗してしまいます。

・チェーンオイルの種類
チェーンオイルは、原料や性質によって、鉱物性・植物性・生分解性の3つに分けられます。

①鉱物性
鉱物系ベースオイル(鉱物系基油、石油の潤滑油留分を精製したもの)を主原料として製造されたものを指します。現在最も普及しているのがこの鉱物性チェーンオイルです。
安価で手に入りやすく、オイルの能力を高める添加剤が使用されているため、非常に使い勝手がいいのが特徴です。一方で、鉱物油は自然界では分解されにくく、長期間に渡って残留するため、自然環境への悪影響が指摘されています。

②植物性
植物性チェーンオイルは、原料が植物由来です。
鉱物性オイルとは反対に、環境への負担が小さく、土壌汚染の軽減が期待されています。
しかし、年度が低く、やや扱いづらいため、管理が難しいといった欠点があります。また、高価で手に入りにくいため国内ではあまり浸透していません。

③生分解性
生分解性潤滑油の原料には、植物油系と非常に高価な合成油系(エステル)が使用されています。しかしコストが高いために、付加価値の高い限定的な市場用途での使用に留まっているのが現状です。
生分解性オイルは、微生物の活動により、最終的に水と二酸化炭素に分解される特徴があり、自然界に戻る性質を持っています。そのため、環境負荷を小さくすることが可能です。

エンジンオイル
次に紹介しますのはエンジンオイルです。
エンジンオイルがどんなものか、もう皆さんご存知ですね。

最初のコラムで紹介した通り、エンジンオイルは非常に多くの役割を持っております。
①潤滑 ②密封 ③冷却 ④洗浄 ⑤防錆 です。

チェンソーでは、エンジンオイルとガソリン(燃料)を混ぜて、動力とします。

エンジンというからには、車にだけ使うのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
実際は、チェンソーや芝刈り機をはじめとした農業用機器でも広く使用されています。



さて、2サイクルエンジンオイルと4サイクルエンジンオイルは、どう使い分ければいいの?という質問も多くいただいていますので、お答えします。

殆どの場合、チェンソーに採用されているのは2ストロークエンジンですので、基本的には2サイクルエンジンオイルを推奨しています。しかしチェンソーの取扱説明書を見ていただくと、「メーカー指定のもの」「粘度のみ指定のもの」、などの記載があるかと思います。
使用する農業用機器の取り扱い説明書の記載をしっかりとご確認の上、オイルをご選択ください。

また、「ガソリンとの混合比率をおしえてください」とお問い合わせもよくいただきますが、
こちらも各メーカー・オイルによって異なります。取扱説明書、あるいは製品表示にしたがってご使用ください。

2サイクルエンジンオイルは、JASO規格でグレード分けされており、性能が良い順にFD>FC>FBとなっています。
こちらも取扱説明書に記載されたものをよく確認してくださいね。
まとめ

チェンソーご使用の際は、必ず安全講習を受け、取り扱いには細心の注意を払ってください。

また、使用前は、チェンソーオイルが補充されているかを必ずご確認ください。
切断作業前に、板などの対象物にチェンソーを近づけてエンジンを吹かせてみると、対象物にオイルが垂れてきます。これが全体にオイルが回っている証拠になります。

冒頭でお伝えした通り、エンジンが回りきっていない状況でチェンソーを使用すると、本体がすぐに摩耗してしまいます。
適切なオイルを選択し、使用するようにしましょう。


さて、今回はチェンソーオイルを解説しました。

少しマニアックな記事になってしまったかもしれませんが、最後までご覧いただきありがとうございました。
何か不明なことがありましたら、お問い合わせフォームよりご連絡ください。






リユースオイルとは② 後編

2023-02-13
左が処理前、右が処理後です。
こちらの写真でも、処理前には沈殿していた不純物が、しっかり取り除かれていることがわかりますね。

前回のコラムで、「不足している性能の添加剤を使用油に再添加させる」と書きましたが、その添加剤の1つを紹介します。
消泡剤
みなさんは「消泡剤」を知っていますか?
字でなんとなく分かるかもしれませんが、「泡を発生しづらくする」役割を持っている添加剤です。

そもそも泡立ちの原因は、使用中に激しく攪拌されたり、劣化物やゴミ等が混入することにあります。
エンジンが回っている間、エンジンオイルは常に攪拌されている状態です。攪拌回数が増えれば増えるほど、必然的に発生する泡の量も増えていきます。

泡立ちが激しいと何が問題かというと、空気に触れる面積が増えるため、熱が逃げにくくなったり
潤滑性が悪化し、金属同士の接触部にオイルがまわり込まずに摩擦が増え、エンジンや機械の故障へと繋がってしまいます。

こうした泡の発生を抑えたり、発生してしまった泡を消す作用をもたらすのが消泡剤です。

実際に、消泡剤を添加する前と後のオイルを比較してみましょう。

泡立ち試験という、オイルに空気を入れた際の泡の立ちやすさ(泡立ち度)及び一定時間後の泡の消失度合い(泡安定度)を測定する試験を見てみましょう。 (試験方法:JIS K 2518)


まず、消泡剤を入れていないオイルの泡立ち試験を見ていきます。
空気を入れると30秒程度で泡立ってきます。3分30秒するとオイルのほとんどが泡に変わりました。
5分で空気を止め、泡が消失する時間を調べたところ、約8分という結果になりました。
続いて、消泡剤を添加したオイルです。
空気を入れると、オイル自体は泡でやや濁りますが、上澄みにはほんのわずかに泡がある程度で
モコモコとした泡はでてきません。 
5分で空気を止め、泡が消失する時間を調べたところ、3分という結果になりました。

この試験から、消泡剤を添加することで
泡立ちが抑制されること、泡立ってもすぐに収まることがわかりますね。
まとめ
消泡剤をはじめとした、適切な添加物を添加することで、ダメージを負ったオイルを回復させることができます。

前回もお伝えしたように、再生のメリットはコストダウンに直結する事です。

本来廃棄されるはずの使用済みオイルが安価な費用で再生でき、もう一度ご使用いただくことができます。
特に、合成油など単価の高い潤滑油では、さらに大きなメリットが期待できます。

※その一方で、弊社までの劣化油の運搬費用を考慮する必要があります。



再生するのに、どれくらいの量が必要か、というご質問もよくいただきます。

運搬費用を考慮したコストメリット、および弊社の製造設備の制約条件などから判断し、最低ロットは、2000L(ドラム10本分)としております。
この際、多量の水分や異物が含まれていると処理ができませんのでご注意ください。


ご依頼をいただいたのち、まず使用油のサンプルを弊社まで送っていただき、弊社のラボにて再生方法を検討致します。

注意点は以下の通りです。
細かく注意点が書いてありますが、キュッとまとめると
「再生対象の油種を確認のうえ、使用油を保管する際は異種の油や水、異物の混入がないようにご注意ください」ということです!

*

さて、少し長くなってしまいましたが、リユースオイルについて一人でも多くの方にお伝えできていたらうれしいです。
もし「ちょっと検討中…」というお客様がいらっしゃいましたら、まずは一度、ご相談下さい。
ご不明点なども遠慮なくお問い合わせください。


おといあわせはこちら

リユースオイル記事①前編
リユースオイル記事②後編:現在のページ




リユースオイルとは② 前編

2023-01-23

こんにちは。
早いもので1月ももう下旬ですね。
お正月ムードもすっかり落ち着いて、日常が戻ってきました。


潤滑油業界では、原材料・容器類の値上げが続き、新油価格も日々高騰しています。また、入手難が発生しており、製造の際に苦労しております…。
そうした市場変化もあり、「再生油」「リユースオイル」という言葉が少しずつ認知され、近頃は再生についてのお問い合わせも多くいただいています。

弊社のことを知らずに、たまたま「再生油」で検索してHP経由でお問い合わせをいただき、実際のお取引に発展する案件も多く、こうしてコラムを書いていて良かったなと思うこの頃です。


リユース事業のページでは、おおまかな再生についての説明に限定されるため、実際はどれくらい復元できるのか、どの油でも再生可能かなどなど、もう少し掘り下げていこうと思います。

(ちなみに、再生のメリットは、「コストダウンに直結する事」であると最初にお伝えしておきます。)




さて、今このコラムを読んでいる皆様の中に、使用済み油(劣化油)を産廃処理されている方はいらっしゃいませんか?


使用済み油は、焼却されたのち埋め立て処分されます。

産廃処理は、コストの面だけでなく環境問題の観点から見ても、早急に解決したい課題です。
お使いのオイルが再生できる油種かどうか、以下の情報を参考にして、是非ご検討ください。


リサイクルとリユースの違い
皆さんは、「3R」というワードに聞き覚えがありますか?

3Rは、リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の3つのRの総称です。

この中でも、リユースとリサイクルは同じような意味では?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
「リサイクル」は、一度ゴミとなった資源を再利用し、形を変えて別の目的に使用することを指します。
「リユース」は、ゴミとして捨てずに、繰り返し使うことを指します。
「3R」の中で、当社の取り組みはリユースに該当します。
同じ目的で再利用できるように再生処理を行ったものを「再生油(リユースオイル)」と呼んでいます。
性能に差異はないのか、というお問い合わせをいただくこともありますが、差異はありません。
試験成績表にて、処理前・処理後の特性値をご確認いただけます。
SNYの技術

1. ろ過処理だけでは、添加剤の劣化や消耗を回復させることができないため、異物の吸着処理や不足している性能の添加剤を使用油に再添加させています。これらの処理により、使用油を新油相当のレベルにまで復元させることができます。

2. 動粘度・水分量・参加などの特性値データを判定し、試験成績表を作成します。さらに、新油との比較データを作成することも可能です。

こちらが実際の油の比較写真です
①が再生処理前使用油 ②が脱水のみを行った使用油 ③がろ過処理まで行った使用油 一番右が新油 です。
瓶の下に敷いている文字に注目していただくと、①と③では鮮明度に大きな差があることが分かります。

①に含まれていた不純物は、再生処理工程を経て、しっかりと取り除かれています。


(→後編に続く)





変圧器の仕組み ②

2022-09-12
柱上変圧器の中身
前回、フタを開けた中には絶縁処理されたコイルや鉄心があり、絶縁油で満たされていると説明しました。

実際に中を見てみましょう。
この褐色の油が絶縁油です。
絶縁油は言わずもがな、電気を通さないために必要な油です。 
(※ちなみに絶縁油が入っておらず、冷却水や空気で冷却する変圧器もあります)

従来の絶縁油にはPCBが使用されていましたが、環境や人体への悪影響から、現在では使用されていません。

絶縁油の他にコイルと鉄心が入っていますが、これらの電磁誘導を利用して、6,600Vの電圧を100Vに変換しています。
それでは、変圧器がどのように電圧を変換しているかを見ていきましょう。
柱上変圧器の基本構造は非常にシンプルです。

鉄心に導線がたくさん巻いてある1次コイル(高圧コイル)と、少ない巻き数の2次コイル(低圧コイル)、
巻き数が異なるこれら2つのコイルを組み合わせて、取り出す電圧の大きさを自由に変えています。

入力側である1次コイル(高圧コイル)に電圧を加えると、電流が流れ鉄心中に磁束が発生します。
発生した磁束は鉄心を通り、2次コイル(低圧コイル)へ 鎖交します。これは「電磁誘導」によるものです。

コイルには、鎖交する磁束が変化すると、電圧が発生するという性質があります。
ファラデーの法則、でピンと来る方もいらっしゃるかもしれません。

この性質により、出力側の2次コイルへと電圧が誘導され、再度交流電流に変換され出力されます。

そして100Vの電圧となって、私たちの家庭へ届きます。



以上が変圧のプロセスです。

普段私達が何気なく目にしている変圧器は、実は私達の当たり前の生活を成立させる、とても重要な役割を担っています。


*


さて、去年から1年以上も引っ張った変圧器のしくみについてのコラムは、これで一旦終わりにします。


今年の夏は特に暑く、早い時期からエアコンを稼働させていたお家やオフィスも多かったのではないでしょうか。
節電要請等もあり、電気について考える機会もあったかと思います。


電気を安全に安定供給するためには、沢山の設備と工夫があることを少しでもお伝えできていればうれしいです。

それではまた次回お会いしましょう!


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